松明結を未来につなぐ

現代の社会では、水道、ガス、電気、ゴミの収集、出産、教育、祝儀、お葬式など日常生活のほとんどが、便利にスムーズにそしてスマートに行えるようになりました。第二次世界大戦までは、これらのほとんどが集落や地域の中で完結しており、周りの人々の協力がなければ生活できませんでした。そうした結びつきのなかで、祭礼も行われてました。
今日、地域の人々とわずらわしい関係をもたなくとも生活が可能であるため、町内の自治会など、横のつながりをはかるコミュニティに参加しない孤立した世帯も増えつつあります。地域におけるコミュニケーション不足は結果として、高齢者問題、子どもの教育問題、さらには犯罪などを引き起こす一因になっているともいえます。
一方で、地域コミュニティ醸成をめざして運動会やサークル活動などの地域活性化活動もさかんではあります。しかしこれらは強制ではないうえに、一過性で継続性に乏しいものも多いです。そのように考えていった場合、地域の鎮守の神さまによって形成され、千年の歴史をもち古式にのっとった祭礼とは、特殊で、説得力のある地域コミュニティであるのでしょう。
松明結は、時には長老に激しく叱られ、仲間ともめることもあるが、鎮守の神様に結ばれたそのつながりを断つことはできません。そのうち打ち解け、絆が深まります。まさしく神様によって結ばれたかけがえのないコミュニティです。
最近では、他地域から移り住み新興住宅街に暮らす人々が祭りに参加する傾向があり、古くから住む人々も好意的に受け入れている集落もあります。
神様のもとに松明を作るという行為は、単なるモノ作りではありません。先人の知恵を継承しながら、目標に向かって共にひとつのものを作り上げるというとです。そこで展開されるコミュニティを大切にする心を育むことこそが、松明結を次世代につなぐことになるはずです。
引用元:加藤賢治「近江八幡のシンボル 松明結」(まちづくり会社 まっせ『松明・結の伝統-近江八幡の火祭り文化』)